テレビを視聴するためにはアンテナが必要だということは多くの人が知っていることですが、なぜアンテナがあるとテレビが映るのかということはあまりよくわかっていない人も多いようです。
一般の人にアンテナの絵をかいてもらうと魚の骨のような形のものを屋根の上に描きますが、これは八木アンテナという指向性に優れたテレビアンテナの特徴的な形です。
八木アンテナがテレビアンテナに採用された経緯を中心に指向性アンテナについて解説します。
そもそもアンテナの指向性とは?
アンテナには受信用と送信用があり、受信用アンテナは空間の電気信号を導線へと誘導する働きをするものです。
ですから球状、ワイヤー状、板状など様々な形のものがアンテナとして機能する可能性があります。
電波を発することで電解や磁界の変化を感知し電流を発生させ、導線に高周波電流を流すのがアンテナでの受診のメカニズムです。
アンテナの指向性とは、特定の方向にのみ電波の放射を集中させ、受信の強度を高める働きのことです。
あらゆる方向から電波を受信できた方が多くの情報を受信できるように思いがちですが、テレビやラジオ放送のように、ある特定の方向からのみ放送電波が発せられるものに関しては、一定方向に集中してその電波だけを受信することに専念したほうが受信の強度は高められます。
不要な妨害電波や他の目的で使用されている電波の影響を減らす働きをするのがアンテナの指向性です。
八木アンテナ、パラボラアンテナなどテレビアンテナとして用いられているものが指向性アンテナの代表格です。
八木アンテナとは
八木アンテナとは、発明した八木博士と宇田博士にちなんで名付けられたアンテナです。
発明から今日まで約100年もの間、世界中で広く愛用されています。
現在では地デジ放送のUHFアンテナとして、アナログ放送時代にはVHFアンテナとして活躍し、アマチュア無線やラジオ等にも活用されていました。
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八木アンテナの構造と特徴について
八木アンテナは放射器、導波器、反射器の3要素から構成されています。
それぞれ長さが異なり、導波器が最も短く、反射器は放射器よりやや長めです。
放射器から見て、導波器の方向に指向性が得られ、導波器(素子)の数を増やすことで利得が増加します。
八木アンテナの特徴は無給電素子(給電しない素子)を持っている事です。
高い指向性を持ち、電波塔や中継基地への位置調整は慎重に行う必要があります。
導波器(素子)の先端の水平部分を電波塔等へ向けて設置します。
指向性とは電波や音等の強さが方向によって異なる事をいい、指向性アンテナの場合には方向によって電波の受信感度が異なる事をいいます。
指向性アンテナは電波塔等の方向からずれてしまうと電波を受信できなくなってしまう面がある一方で、正確な方向へ向いている時には電波塔までの距離があっても受信できる利点があります。
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八木アンテナの電圧と電流分布
八木アンテナはその長さにより電波の指向性が異なります。
それはアンテナが共振した時の電圧や電流の状態による為です。
八木アンテナは電圧が高い部分(電流が少ない部分)と電圧が低い部分(大電流が流れている部分)が併存しており、アンテナに高周波電流を流すとアンテナ線上に電流と電圧が分布します。
電圧が最大の部分を電圧の腹、電流の最大の部分を電流の腹といい、それぞれが最小の部分を電圧の節、電流の節といいます。
アンテナの長さが1/2波長の整倍数の時アンテナが共振し、電流の最大地点は高周波を供給する端子(給電点)で、アンテナの先端では電流は皆無になる、給電点を中心とした電気双極と考えられています。
アンテナの先端の電流がゼロになる理由は、電波の放射が磁界の発生に依存している為です。
アンテナの長さが1/2波長より短い部分(アンテナの端部)では電流の極性が反転して双方の磁界を相殺する為に電波の放射が弱くなり、先端では電流が皆無になります。
八木アンテナの素子数と利得の関係
八木アンテナは放射器(ラジエーター)、導波器(ディレクター)、反射器(リフレクター)の3要素から設計され、導波器が素子にあたります。
素子の数を増やすことで電波の受信強度が高まり、利得が増加します。
素子とは導波器や反射器等の棒の総称で、導波素子、反射素子と表す事もありますが、ここでは導波素子のことを指しています。
八木アンテナを魚の骨に例えると、導波素子は魚の骨の小骨にあたります。
利得とは簡単に表すと電波を強める度合いの事です。
八木アンテナは特定の方向だけに電波を送受信する事ができ、さらに他の方向へ放射しない電波を集めて一点の方向へ放射する事ができます。
他の方向への電波を集めて電波を強めますが、その強める度合いを利得と表しています。
利得はアンテナの面積に依存します。
八木アンテナの面積は小さいように見えますが、この場合の面積は実効面積です。
八木アンテナは電波到来地点(魚の尾先)から放射器(魚の頭)までが長く実質的な面積は大きく、素子を増やして放射距離を伸ばすことで利得が増す関係が生まれています。
八木アンテナの使用帯域幅に関する工夫
八木アンテナは放射器、導波器、反射器の3要素から構成されており、放射器と給電部を合わせて輻射器といいます。
放射器は主に導波器が集めた電波を集約して、放射器の真ん中にはある給電部へ送ります。
給電部は同軸ケーブルを通じてテレビまで電波を届ける役割を持っています。
テレビが受信する電波が弱い時、給電部の先にブースターを取り付けて、八木アンテナが受信するアンテナの強度を上げます。
八木アンテナは470~710MHzの帯域電波を分けて受信しており、全帯域用の種類を使用することで受信できるチャンネルを全て視聴することができます。
パラボラアンテナと八木アンテナの違い
パラボラアンテナとは、盃に角が一本生えたような形をしたアンテナです。
盃の部分で広く電波を拾い、角の部分に電波を集中させています。
テレビ視聴用に使用されるパラボラアンテナは放送衛星から電波を受信し、衛星放送を視聴する為のBS/CSアンテナです。
BS/CSアンテナ(パラボラアンテナ)は八木アンテナと同様に指向性を持ち、特定方向のみに電波が放射する点で共通しています。
しかしBS/CSアンテナは赤道上空36,000kmに浮かぶ人工衛星から電波を受信し、アンテナまでの距離は相当あります。
八木アンテナは地上に存する最も近い電波塔や中継基地等から電波を受信する為、パラボラアンテナに比べると電波が飛ぶ距離は近距離といえます。
その為にパラボラアンテナは盃が電波を受け止めるような形をして広く電波を集めています。
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八木アンテナの設置方法は?
八木アンテナが屋根の上に設置されている家をよく見ますが、それは屋根の上にあるから目が行きやすいだけであり、設置場所は屋根の上に限られていません。
ただ屋根の上に設置するメリットは大きく、家の最も高い場所であり電波塔等からの電波を遮るものが最も少なく電波を安定して受信できます。
電波環境があまり恵まれていない場合には屋根の上に設置する事が多いです。
屋根の上以外では外壁や破風板等です。
屋根の上に設置する時は屋根馬という台に載せてワイヤーで固定しますが、壁面や破風板の時は専用の取付け金具を用いて固定します。
電波がある程度強い環境下では、八木アンテナをベランダに設置する方法もあります。
ベランダの柵に取り付ける事で壁面や破風板に穴を開けずに設置する事ができます。
また屋根裏に八木アンテナを設置する方法もあります。
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全方向性アンテナとは?長所と短所がある?
全方向アンテナは無指向性アンテナともいい、指向性を持たないアンテナのことを指します。
すべての方向に対して同程度の強度や感度をもっているもので、オムニアンテナという呼び方もします。
無線LANのアンテナがその代表格で、どの方向に向けても同じレベルの電波を発します電波の送受信方向を気にしなくてよいため、設置しやすい場所に設置しやすい形で置くといことも可能です。
大量の設置が必要な携帯電話用のアンテナは全方向性アンテナのため設置が簡単で、場所をあまり選ばずに設置できました。
携帯電話自体にもホイップロッドアンテナという全方向アンテナが備わっており、両方の働きでどこでも受信しやすくなり、長いアンテナも必要なくなりました。
ただし、全方向に等しくといっても、アンテナの形状によっては、球状にではなく円状に等しい広がりを持っているという意味の場合もあります。
水平方向には同程度の強度や感度を持っていても、垂直方向にはほとんど強度や感度を持っていないというものもあります。
また、一定方向にのみ送受信を増幅するということができないため、不要な電波による干渉を受けやすい点も短所です。
無線LANのように比較的近距離に電波を送る場合や、携帯電話のようにどのような姿勢でも使えるようにしたいもの、携帯基地局のアンテナのように同心円状に等しく電波を発したい物などには全方向性アンテナが向いていると言えます。
指向性アンテナの長所と短所も確認しよう!
指向性アンテナの長所は何と言っても、特定方向から発せられる電波を受信が得意という点です。
決まった方向からの電波を増幅して受信できるため、必ず同じ方向から発せられるテレビ電波のようなものを安定して高い感度で受信するのに向いています。
八木アンテナは中でも指向性の強いアンテナで、3つの棒からできています。
導波器、放射器、反射器という3本の棒を正しい方向に向けないときちんとテレビが映らないという点は短所といえるかもしれません。
同じく指向性の強いアンテナとして挙げられるのがパラボラアンテナです。きちんと方向を調整しなければ映りません。
しかし、電波受信の効率の良さは指向性アンテナの長所です。
受信方向を正しく向けることができれば、ラジオ放送や無線など他の電波の影響を受けずに受信できます。
遠方との電波のやり取りが必要な場合は、アンテナの指向性を利用して、一方向からの感度や強度を高めることが有効だと言えます。
指向性に関わるダイポールアンテナは八木アンテナと似ている?
画像引用元URL:むせんZONE25
ダイポールアンテナとは、主にアマチュア無線で使われることが多く、簡単な原理さえわかっていれば自作しやすいため、自作アンテナとしても広く普及しているアンテナのひとつです。
ダイポールとは2つの極があるという意味で、通常は2分の1波長を使います。
2本の動線を給電線に直角に取り付けるのが特徴で、それだけではあまり指向性が強くないのが難点です。
しかし、ダイポールアンテナの前後に導波器と反射器を置くと、指向性は飛躍的に高まります。
この構造は導波器、放射器、反射器の3本のポールからなる八木アンテナの構造そのもので、ダイポールアンテナの指向性を高めたものが八木アンテナであることがわかります。
このように、アンテナは全指向性アンテナと指向性アンテナの2つにわかれているものの、どちらが優れているというものではありません。
それぞれの長所短所を補う形で応用され、実用化されています。
まとめ
今回はアンテナの原理から見る八木アンテナについて説明しました。
八木アンテナが開発されてから100年近く経ってもその姿形がほとんど変化していない事は、それだけ八木アンテナがほぼ完成形と言えるからではないでしょうか。
八木アンテナは高い指向性がある為に電波塔や中継基地への方向調整が肝心です。
自分でアンテナを設置して安定して電波を受信できないケースでは、方向調整が誤っていたり、固定が甘くて少しの悪天候で方向がずれていたりするケースが散見されます。
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