同じテレビアンテナであっても、マンションと一戸建てでは設置方法や注意点が大きく異なります。
アンテナからケーブルを引いて受像機まで信号を送る基本は同じですが、マンションではひとつのアンテナを共同で利用する前提となるため、分配方式や機器選定、維持管理の考え方が変わります。
さらに、区分所有と共用部という権利関係が絡むため、管理組合の合意やオーナーの許可なしの施工はトラブルのもと。
着手前に「誰の、どの承認が必要か」を整理し、合意形成なしには進めない工程管理が欠かせません。
ここでは、一戸建てとの違いを踏まえながら、マンションのアンテナ設置で押さえるべき要点を確認していきましょう。
テレビアンテナ設置の違いは?マンションと一戸建て
テレビアンテナからの電波は同軸ケーブルで受信機まで送るのが基本です。
マンションでは、屋上に共用アンテナを立てて、そこから各住戸に分配する方式を取ります。
アンテナから各住戸内までの伝送経路としては、アンテナで受信した電波が、混合器・ブースター・分岐分波器などを経て各住戸のTVコンセントに供給される方式が一般的です。
分配が必須のマンションのアンテナは、受信感度が良い大きなものが理想的でしょう。
ただし、設置場所である屋上はかなりの風圧を受けますので、アンテナ支柱や取付台の強度については建物の設計段階から考慮しておく必要があります。
それに対し、一戸建ては、アンテナ設置場所の自由度が高いといえるでしょう。
屋根だけでなく、壁面や2Fのベランダや、庭に立てた支柱に設置することもできます。
デザイン上、アンテナを見せたくない場合は、屋根裏に設置する方法まであるのです。
アンテナ自体も、比較的小さいもので十分で、一見するとアンテナには見えないようなデザインアンテナも使えます。
受像機の台数が少ない場合は、ブースターの必要もないため、マンションと比べてシンプルな伝送経路です。
新規設置と交換でも違う!それぞれの注意点
新規設置の場合は、まず受信電波の状態をチェックします。
同時に、受信機が置かれることになる戸数を調べることが大切です。
特にマンションなどの集合住宅では、アンテナで受信した電波を共同で利用し、それを各部屋へ分配する仕組みが必要になります。
基本的な考え方としては、受信機の数が増えれば増えるほど、一台あたりに分配される電波は弱まります。
これは地上デジタル放送も、衛星からの電波を受けるBS・CS放送も同様で、十分な電波の強さがなければ視聴できません。
そのための対策として、アンテナの受信感度を上げるか、ブースターを設置して電波を増幅する方法が取られます。
大きなアンテナを使用すれば感度は上がりますが、風の影響を受けやすくなるため、支柱や取付台といった設備を強化する必要があります。
実際には、ある程度大きめのアンテナとブースターを組み合わせることが多いでしょう。
交換の場合はさまざまなケースがあります。
耐用年数が過ぎた場合、新しいアンテナは小型化している傾向があるため、以前よりコンパクトなものに変更できる可能性もあります。
また、周辺に高層建物が建ち遮蔽障害が起きた場合は、高性能アンテナへの交換で解決できることもありますが、場合によってはCATV(ケーブルテレビ)を利用する方法に切り替える必要も出てきます。
その際はマンションにケーブルテレビ用のターミナルを設置し、管理組合と居住者、業者との綿密な協議が不可欠です。
ここからは、戸建てと集合住宅で違いが出る「アンテナ」「分配器」「ブースター」について詳しく見ていきましょう。
アンテナの選び方と設置の注意点
戸建て住宅で使用するアンテナは、基本的に1世帯用の電波受信が前提となります。
しかし集合住宅では、多くの世帯が共同利用するため、より安定した受信性能を持つアンテナが必要です。
場合によっては高性能アンテナや大型アンテナを導入することで、全戸に十分な電波を届けられるようにします。
アンテナ設備の選択は、電波環境や戸数を考慮して決めることが重要です。
分配器の違いと重要性
電波を各部屋に分けるための分配器も、戸建てと集合住宅では大きく異なります。
戸建てでは数台のテレビに分けるだけで済みますが、集合住宅では数十戸へ信号を送ることもあります。
そのため、大型で高性能な集合住宅用の分配器が必要になります。
さらに階ごとや棟ごとに分配器を設置し、効率的に電波を供給する仕組みを整えることもあります。
分配器の性能が不足すると、映像が乱れるなどのトラブルにつながるため、適切な機器の選択と設置が不可欠です。
ブースターの役割とCATVブースター
電波を増幅するブースターも、戸建てと集合住宅では仕様が異なるケースがあります。
集合住宅では分配器を通すことで信号が大きく減衰するため、より強力な共同利用用のブースターが必要です。
さらに、ケーブルテレビを導入する場合は「CATVブースター」という専用機器を設置することがあります。
これは、地デジやBS・CSの電波だけでなく、インターネット信号を同じ同軸ケーブルで流す場合があるため、対応したブースターが不可欠となるのです。
集合住宅で使用されるテレビアンテナ
集合住宅で使用されるテレビアンテナは、戸建の家に設置するアンテナと比べて求められる性能や規模が異なります。
特にアパートやマンションといった共同住宅では、複数世帯が共同で利用するため、電波を安定して供給できる高性能な設備が必要です。
電波の受信状況や周辺環境によってはアンテナの向きを細かく調整しなければならないケースもあります。
新築時にあらかじめアンテナを設置するケースもあれば、既存設備が古くなり交換する場合もあります。
いずれにしても「テレビが映らない」という状況を防ぐためには、適切なアンテナ選びが欠かせません。
ここでは集合住宅で多く採用される2種類のアンテナをご紹介します。
マンションでアンテナを設置する場合の注意点
マンションは戸建住宅と異なり、権利関係と管理主体が複雑です。
各住戸は区分所有ですが、共用部の所有権は按分され、管理は管理組合が行うというのが一般的です。
まず、この関係を調べて、誰にどのような許可を得るべきか整理してください。
このプロセスをきっちりと押さえていないと、工事中止や不要なトラブルの原因になります。
実際のアンテナ工事のポイントは、オーナーが区分所有権を持っている各住戸内の工事です。
まず、工事日程の調整を行います。
作業について、オーナーまたは居住者へ通知してください。
共用部分の工事とは異なり、基本的にオーナーまたは、居住者立ち会いのもとで入室しての作業となります。
委任状などをもらえれば、管理組合側の責任者が代理でも作業可能です。
作業の日程が決まれば、アンテナ工事に支障が出ないように、家具などの移動についても、十分に周知しておく必要があります。
室内でのアンテナ工事は、主に壁面の電源コンセントの近くにあるTVコンセントまわりの作業です。
作業予定日までに、作業スペースを確保しておいてもらえるように、丁寧に依頼しておきましょう。
ここからは、みずほアンテナで実際に行ったアパートのアンテナ交換の実例をご紹介いたします。
先日、築7年・全9世帯が入居するアパートにて、テレビが突然映らなくなるというトラブルが発生しました。
状況を確認したところ、既存の外壁面には八木式アンテナとBSアンテナが設置されており、さらにブースターも取り付けられていました。
しかし、落雷の影響でアンテナとブースターの双方に故障が見つかり、修理では対応できないことが判明しました。
そのため、今回はアンテナとブースターを丸ごと新しいものへ交換する工事を実施しました。
アパートのように複数の世帯で共同利用する設備は、一部の不具合でも全住戸に影響が及ぶため、迅速な対応が求められます。
管理組合やオーナー様と相談のうえ、最新の機器へ交換することで、再び全世帯で安定したテレビ視聴が可能になりました。
このように、集合住宅のアンテナ設備は日常的なメンテナンスも重要であり、特に落雷や強風など自然災害後は、定期的な点検を行うことが安心につながります。
設置前に業者と綿密に相談しよう
マンションでのテレビアンテナの設置工事は、新規設置であっても交換であっても、関係者との合意形成がスムーズな作業のポイントになります。
オーナーや居住者への情報提供は必須です。
入室日の調整だけでなく、工事の概要や必要性などについても十分なコミュニケーションを図り、作業への理解を求めましょう。
また、設置を請け負う専門業者との連携も不可欠です。
綿密な協議を重ねて作業内容の相互理解を深めてください。
専門業者の選定にあたっては、マンションでの設置実績のある業者を選ぶのが安心です。
インターネット上の業者のサイトから情報を収集したり、管理会社が管理する別のマンションでのアンテナ工事の情報を参考にしたりするとよいでしょう。
ー参考記事ー
☞【マンションのテレビアンテナはどこについてる?集合住宅の取り付けに強い業者は?】
☞【マンションでテレビが映らない!アンテナが原因?対処法や依頼先を解説】
